トレンドと逆を行く道
どうも日本企業はコストをかけることが得意なようです。
東京都調布市の住宅街の陥没事故は、記憶に新しいのではないでしょうか。
直径16mのシールドマシンを使って「東京外かく環状道路」のためのトンネルを掘削中に起きたもので、事故後の調査では最大30mの空洞も見つかったそうです。
16mといったら4階~5階建てのビルの高さ、30mなら10階相当という巨大空間になります。
それが、日常生活の真下にあったのですから、恐ろしいと言わざるを得ません。
巨大地下空間の上にある50m近い土砂を安全に支える。
そのような構造は相当難しいというのは素人でも容易に想像できます。
「難しい工事=高い技術が必要でコストと時間が相当かかる」工事が、日本の建設業のトレンドになっているようです。
電気自動車の話をします。
電気エネルギーの元となるバッテリをどうするか、
どうやって連続航行距離をガソリン車並みにするか
という課題が解決できず、日本ではバッテリ性能のイノベーションにかけていました。
今もあまりかわっていないような雰囲気さえあります。
初代リーフは、充電設備を考慮するとイニシャルで約400万円、航行距離130km程度でした。
専用のリチウムイオン電池を設計し、コストがかかっています。
2020年、トヨタ自動車を時価総額で抜き去り、自動車業界の雄に躍り出たテスラモーターズ。
そのテスラモーターズは、当初18650という規格化された円筒形リチウムイオン電池を採用しました。
18650は、電動ドライバーや充電式の掃除機、モバイルバッテリーにも使われています。
alixpressでは中華製のもので1本300円程度で販売されています。
テスラ は1台につき3,000~4,000本使われているそうで、ざっくり90万~120万円。
(ロードスターは、6,831本で、210万円。車両価格2千万円を考えると、相当のぼったくり笑)
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1201/24/news015.html
日本の自動車メーカーは、リチウムイオンバッテリを交換できる構造にしていますが、テスラモーターズはフレームの一部、車の構造部材になるように設計されています。つまり、エネルギーの蓄電のほかに、車体の基本構造として2重に役割を持たせています。
ズル賢いですよね。
既存規格のリチウムイオン電池をつかって圧倒的にコストを削り、そのバッテリ部材を車体の基本構造としても使うという、コストと設計の両方からアプローチしています。
トンネルの話に戻ります。
イーロン・マスク氏は、ボーリングカンパニー(The Boring company)でハイパーループ構想を推し進めています。
地下空間に高速移動できるトンネル網を創るというものですが、その基本事業は電気自動車が通れるサイズ(直径3.6m)のトンネルを掘るというものです。
冒頭で書いたNEXCOが開発する、既存の雑多な自動車種(自家用車、トラック、バス等。ガソリン車、ディーゼル車、電気自動車等)を、そのまま地下空間で走らせるというトンネル。
安全性を最大限考慮して、技術もコストも時間もかける日本のトンネル。
世界一なんでしょうけど、ただでさえミスをする人が運転し、視界が限られた空間を走行することを想像すると、、、、、
ゾッとします。
直径3.6mのトンネルは、断面積で比較すると先述の直径16mシールドマシンの20分の1です。
走る車は、排気の出ない電気自動車が自動制御され運用されます。
リチウムイオン電池の戦略とトンネルの戦略。
日本企業と米国企業が選択するそれぞれの戦略、何か似ているものを感じるのは私だけでしょうか。
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